2010年7月30日金曜日

藤森照信講演会 土と建築

7月31日、建築史家・建築家である藤森照信による講演会が行われました。


テーマは「土と建築」ということで、土が構造として使用されている建築の紹介に始まり、土・石・木といった素材の特性と気候・風土といった場所性の関連を描きながら、ご自身の設計された建築もプレゼンしてくださいました。

写真は紹介にあったアフリカ・マリ共和国のジェンネという都市の泥でできたモスク。
(photo by http://www.flickr.com/photos/phase3/2988964373/


*この記事は作成途中です。

2010年7月29日木曜日

水のゆくえ @KCUA Caféの進行

@KCUA Café
-土は水によってかたちをなし、人は水によっていのちをつむぐ。京都の東端、美術館の横を流れる琵琶湖疏水は京都近代化の礎であり、今も市民の心身を潤している。他方、京都の西端では高速道路建設のために多くの民家や竹林が破壊されている。そこから土約12トン、竹数十本を運び、疏水の水を使って、美術館の前庭に水を飲むための「アクアカフェ」をワーク・イン・プログレスとして構築する。アクアカフェはまた、疏水によってかたちをなした岡崎の地を、身体・地形・生態系をつなぐ新たな視点からとらえ直すワークショップのプラットフォームとなる。

井上明彦氏(「生存のエシックス」プロジェクトチーム)によるアクアカフェは今週に入り、土塗りも始まり、随分と最終形態に近づいてきた模様です。

制作を開始した7月初めはまだ梅雨も開けきらず、突然の夕立に見舞われ作業の中断もしばしばでした。
中旬になって梅雨は開けたものの、夏の日差しは日増しに強くなり、屋外での作業は見るからに過酷そうだし、井上氏はお会いするたび日焼けで真っ黒な顔になっていきます。

…けど、とても楽しそう。


7月13日 竹小舞(竹による網目状の骨組み)を製作中。



7月15日 作業風景を上から撮影。



7月24日 窓枠が取り付けられている。



7月25日 土塗りが始まる。


作業のプロセスや日々の出来事は井上氏のブログをご参照ください。
こちら→http://peuleu2.exblog.jp/

2010年7月25日日曜日

カタログ制作ワークショップ

生存のエシックス展の展覧会図録(カタログ)は"work book"と呼ばれています。
テキストページ、各プロジェクトに関するページ、空白のページで構成されており、二つ穴のファイルになっているので、自由にページを入れ替えることができます。
また、会場各所に配置されているガイドや、ワークルームに置いてある用紙を使って、ページを増やすことができます。(不要だと思うページを削ることも。)

つまり、展覧会企画者が与える一方的な情報ではなく、鑑賞者自らが「知」を収集/編集するためのツールなのです。



本日行なわれたカタログ制作ワークショップは、そのページの収集/編集作業をワークショップ形式で行なうというもの。
ひとつの場所(ワークルーム)で複数人が作業をすることで、意見やアイデアを交換しようという試みです。
また、ページを切り取る作業をすることで、完成されたものを購入するよりか安価にwork bookを手に入れることができます。

参加者は、ワークルームにある本のコピーや会場で撮った写真のプリントをコラージュしたり、ページを切り抜いたりと、熱心に作業にとりかかっていました。

このワークショップは8/1(日)と8/20(金)にも開催されます。





参考:収録テキスト
高橋 悟(京都市立芸術大学美術学部准教授): Trouble in Paradise/Medi(t)ation of Survival: 歩行ガイド/Trail Guide
十一元三(京都大学大学院医学研究科教授): 発達障害を通じた医療と芸術のクロストーク——対人相互性と重力
立木康介(京都大学人文科学研究所准教授): 芸術・思考・心的空間
岩城見一(京都大学名誉教授、前京都国立近代美術館長): 「生存のエシックス」のために —「表現論理」の意味を考える

ワークルームの変化。

机、椅子、コピー機、パソコン、プリンター、筆記道具、文房具、、、、

ワークショップ会場になったり、教室になったり、図書館になったり、オフィスになったり、休憩所になったりする所。


搬入・展示時点でのワークルーム。空っぽの棚や新品の黒板、汚れていない机は空虚でトーマス・デマンドの作品(紙で作った家具などの模型でオフィス、ラボ、コピーショップ、ウィンドウ、キッチン、流し台、廊下などを再現し、撮影した写真)を思い出した。



デヴィッド・ダンによるワークショップ。ワークルームはラボになる。



本棚にはプロジェクトチームにより持ち込まれた本が並ぶ。「生存のエシックス」展覧会に関係づけられるような展覧会図録、イメージソース、影響を受けた本など。来場者は自由に閲覧できる。



ワークショップに使用する資料などもこの部屋で準備される。



黒板も自由に書き込むことができる。
意外とアニメや漫画のイラストやが多く、感想などの文章は少ない。


定期的に消し、新しく書き込むための場所が作られる。会場内で撮った写真やイベントの記録写真を掲示したり、イベントの告知にも使われる。



このワークルームもカタログと同様、鑑賞者が作家から一方的な情報を受けるのではなく、鑑賞者が自ら知を収集し再編成し発信する為のフィールドとして考えられた。

とはいえ、始めて訪れた来場者が積極的に活用している場面を見かけることは少ない。
これも展示作品なのかと戸惑ったり、どうしていいかわからず躊躇している様子も見受けられる。美術館は、知識を与えられる場所だという見解が一般的なのだろう。

批判的に見れば、もう少し参加しやすい環境を整えるべき。(わかりやすい案内を掲示することとか)
肯定的に見れば、一般の鑑賞者に「この部屋は何?」とまず考えはじめるきっかけにはなっている。

2010年7月24日土曜日

7/24 水のゆくえー連鎖する水声

*この記事は作成途中です。

本日の講演会ゲストは2人。
まず、立命館大学名誉教授/元立命館大学陸上競技部監督の岡尾惠市さんによるお話。
トピックは「陸上競技部の育成/水分補給とスポーツ」
現在は運動中に水分を補給することは当然のように考えられているが、より身体を鍛える為に水分補給が禁止されていた時代もあった。


2人目のゲストは牧野容子さん。立命館大学職員で元シンクロナイズドスイミング・オリンピックメダリストである。

まず、彼女が出場したオリンピックでの演技映像を鑑賞し、水中で動くことについての話を伺う。




オリンピック金メダルも見せていただいた。

2010年7月23日金曜日

7/23 健康診断ワークショップ

「健康診断ワークショップ」という美術館ではなかなか珍しいタイトルのワークショップが開催された。ワークショップ内容は、
 「生存のエシックス展」の医療系展示作品を使って、専用カルテに、あなたの心・体・脳の健康状態を「生存のエシックス的」に診断します。
というもの。

参加者は、少人数のグループにわかれ、森公一による<光・音・脳>、 中原浩大+井上明彦<関係概念としての知覚的自己定位の研究>プロジェクトよりテンプル・グランディンによる<ハグマシン>、高橋 悟+松井紫朗による<二重軸回転ステージ>を体験する。

<光・音・脳>では、体験者がさまざまな色の光の投影を眺め、変化する水の音をヘッドフォンで聴いている間に、脳血流測定装置による前頭葉の血流測定が行われる。測定結果は瞬時に解析、「心地よい」と装置が診断した色や音に再び生成変化し、鑑賞者に与えられる。





<ハグマシン>では、体験者は自分でレバーを調節し、心地よいと思われる強さまで自分の身体を締め付けていく。

<二重軸回転ステージ>では、投影される映像と自分の身体感覚のズレや扉をくぐり抜ける前後の感覚の微妙な変化を感じながらステージ上を歩行し、携帯型脳血流測定装置をつけ前頭葉の血流測定を行なう。


診断は数値による計測結果ではなく、オリジナルの健康診断票に書かれた設問に答える形で体験者自らが記入していく。

すべての装置の体験が終了した後に、話し合いの場が持たれる。

健康診断は普通、医師による診察や医療器具に基づいた計測の結果が受診者に知らされるものである。けれどこのワークショップには医師はおらず、計測結果も知らされない。受診者に最残されるのは数値に基づいた結果ではなく、経験や感覚である。

これは、健康とは何か?を参加者が自ら問い直す"ワークショップ"であり、一方的に診断が下される"西洋医学的な健康診断"とは異なる。
「診断をされる」と思って参加した参加者はどこか納得のいかない表情であったが、自分の身体を数値に置き換えること、数値が表すものと自分の感覚とのズレ(「心」や「感情」はどこにあるのか?それらは「身体」とは別のものであるのか?という疑問につながる)について考える機会にはなっただろう。

2010年7月20日火曜日

水のゆくえ,連鎖する水声/本多和夫さん講演


今日は、平安神宮の禰宜で、毎日神苑の生物の様子を観察されている本多さんに来て頂きました。
本多さんは、22年間,神苑に棲む、鳥、魚,獣、昆虫、両生類など,多様な生態系を観察されてきました。氏は,この多様さは一種の攪乱によって、保持されているとか、、。そのままの自然の中では、攪乱はあまり起こらず、数種類の定まった種しか残らないそうです。では、神苑の攪乱とは、掃除や枝刈りなのだそうです。適度に掃除をすることが、コツだそうです。70名いる平安神宮の職員は、鳥の死骸,ケモノの足跡,新しい鳥の鳴き声など、ちょっとした変化も本多さんに知らせ、この生態系のゆくえを見守っています。愛に溢れた、そしてユーモア一杯の講演でした。

2010年7月19日月曜日

会場の様子

7/17,18,19の3連休、大勢の方にご来場いただいています。

2010年7月18日日曜日

7/18、水のゆくえー連鎖する水声講演会、美術家さんと漁師さん

本日の水のゆくえ-連鎖する水声プロジェクト、関連講演会のゲストスピーカーは、美術家で、京都造形芸術大学と成安造形大学で非常勤講師をされている石川 亮さんと、琵琶湖で漁師をされている田中清司さん、清水秀之さん。

石川さんは、ご自身の作品で近江の涌水を使用されており、近江の水源を詳しく調査されているとのこと。現在石川さんが訪ねられた80箇所の水源から、水源を以下の3つに分類、いくつかの例を紹介してくださいました。
 1.生活用水として使用されているもの。(町の共同の洗い場など)
 2.社寺仏閣の水。(御神水、手水)
 3.環境と一体となっているもの。(ビオトープ、湧水公園など)
また、これらの水源は非常にローカルなもの(特定の地域に限定されているもの)ですが、生命の根源であり、生命全体へともつながっているものだということをおっしゃっていました。


漁師の田中さん、清水さんは琵琶湖でえり漁をして暮らす中から感じる生態系の変化や人間と琵琶湖の関係についてお話しくださいました。



本来は日本にいないはずの外来種、ブラックバスやブルーギル。
それらが琵琶湖に入り込んだことでどう生態系が変化したか。
また、それを持ち込んだのは人間であることなど。



現役漁師さんの話を聞くめったにない機会。参加者から積極的な質問や意見が出されました。

2010年7月17日土曜日

7月17日、水のゆくえー連鎖する水声プロジェクト・講演会

"水のゆくえ"プロジェクトに関する講演会に、今日は自転車搭載型緊急用浄水装置<シクロクリーン>の開発者である勝浦雄一さんがお越しくださいました。

三菱レーヨン勤務時代に中空糸膜というとても細かい目のフィルターを開発し、家庭用浄水器の開発に携わっていたこと。
阪神大震災後の火災や断水による2次災害・世界の水の状況についてのユニセフの発表をきっかけに、ライフラインとしての水の重要性を考え直し、緊急用の浄水装置を考えるようになったこと。
そして開発されたシクロクリーンは、2008年にサイクロンによる災害に見舞われたミャンマーの村々や医療施設をまわり、2009年にはバングラデシュで防災大臣と対談し、海水淡水化用逆浸透膜水処理装置Desalicleanも開発されていることなどをお話しくださいました。

日本では蛇口を捻れば当たり前のように出てくる水だが、世界では8億6,000万人以上の人々が、汚れた水しか飲むことができず、26億人の人々が衛生的なトイレを利用することができないといいます(ユニセフHPより)。
水についてあらためて考えることになりました。





日本ユニセフ協会

コレクション・ギャラリーの紹介

エシックス展会場は1階と3階。
4階では京都国立近代美術館所蔵作品による展覧会が行われている。

いくつかの展示テーマの中でも、「京都市立芸術大学で教鞭を執った作家たち」は、三尾公三、徳岡神泉、秋野不矩、小野竹喬といった、かつて日本の美術・デザインを牽引した作家であり、京都市立芸術大学で教鞭を執った作家たちの作品が紹介されている。
エシックス展プロジェクトチームが現在の京都市立芸術大学で教育者の立場にあることをふまえ、エシックス展と対比して興味深く見ることができる。

また、「コレクションにみる<生存のエシックス>」では所蔵作品の中から環境と人の在り方にヒントを与えてくれるような作品として、地球と人間の関わりをテーマとしたマグダレーナ・アバカノヴィッチ、渡邊晴美のタペストリーの作品や、アメリカの工業都市を映したユージン・スミスの写真作品、また陶芸の鯉江良二、発光ダイオードを使った宮島達男とコレクションの幅広さもさることながら、それらの配置・構成もおもしろい。

ほかにも、「野村仁:宇宙へ!」では、「宇宙」というテーマでのエシックス展との共通点だけでなく、<真空からの発生><内部構造:弦1><トポロジーチェンジ>といった作品では、スサーナ・ソアレス:蜂プロジェクトのガラスオブジェとの素材の共通性、制作意図の差異を見つけることもできる。

再び3Fへ戻ると、ワークルームにて岩城見一氏のテキストを発見。思想・アート・美的経験・自然科学の関わりについての一視点—カントの批判的「宇宙論」への<感性論>的アプローチ—と題されたそのテキストには先ほど見た野村仁の作品が紹介されていた。

生命、医療、環境、宇宙における芸術的アプローチ。エシックス展を一見しただけでは個々のプロジェクトのつながりを見ることは難しいかもしれないが、読み解くヒントは会場だけでなく会場外へもちりばめられているみたいだ。

写真上:スサーナ・ソアレス<蜂プロジェクト>  下:岩城見一氏のテキスト。


2010年7月13日火曜日

7/13、スティーブ・カーツ氏インタビュー

本日、10時より出品作家クリティカル・アート・アンサンブル(以下、CAE)よりスティーブ・カーツ氏のインタビューが行なわれました。

インタビューは「CAEはどうやって活動資金を得ているのか?」という質問から始まり、美術館との関係、美術館の制度(構造)について、大学教育の問題、教育理念、経済/資本主義、新しいコミュニティの可能性、恊働制作の意義など、さまざまなトピックに渡り展開されました。

2010年7月11日日曜日

7月11日、デビッド・ダンによるマイク制作ワークショップ


3階ワークルームにて、作曲家デビッド・ダン氏によるマイク制作のワークショップが行なわれました。
ダン氏は「音楽を作る」という作曲ではなく、世界を聴覚によって認識するという観点から音を扱っています。そのため、さまざまな音を聞くために多くのマイクを自作しています。
たとえば、水中の音響を聴くためのハイドロフォン、巣の奥のアリなど隠れた場所の小さな生物の音を聴くための挿入型マイクロフォン、人間の可聴域を越えた周波数を捉えるウルトラサウンド・トランスデューサー、木にさし込み樹皮の中の音を聴くためのヴァイブレーション・トランスデューサーなど。
同じ機能を持った市販のマイクもありますが、それらは格段に高く、簡単には手に入れられません。しかし、ダン氏の考案したマイクは驚く程安い素材で、手軽に作ることができます。
それによって、多くの人が音を聴く機会に接することができることが重要なのでしょう。


本日のワークショップでは、木に差し込むヴァイブレーション・トランスデューサーを作成しました。
出来上がったマイクを持ち帰った参加者たちは、いったいどのような音を聞くことができるのでしょうか?

7月11日、水のゆくえー連鎖する声プロジェクト・講演会

本日より、水のゆくえー連鎖する声プロジェクト(担当:中ハシ克シゲ)の公開制作が始まりました。
プロジェクトは、参加者とともに写真をパズルゲームのように繋ぎあわせていき、“水”と関係の深い巨大な立体物を造り上げるというものです。
また、手を動かすだけではなく、琵琶湖疎水に関連する人々、“水”と関係するさまざまな人々にそれぞれの経験や知識を語ってもらい、それらを共有していきます。



本日のゲストは琵琶湖疏水記念館嘱託研究員・白木正俊氏。
琵琶湖疎水についての基礎知識(大きさ、取水量など…)、琵琶湖疎水の歴史、疎水が果たしている役割などを解説していただきました。

2010年7月9日金曜日

ミシガン大学「未来の家政学」デモンストレーション

ミシガン大学、rootoftwo (John Marshall & Cezanne Charles)+PLY Architecture (Karl Daubmann & Craig Borum)による「未来の家政学・Tea House of Robots」のデモンストレーション・アーティストトークが行われました。
この作品では、壁に取り付けられたカメラの前で笑顔を見せると茶室の一部が開口し、中の様子が窺えるものとなっています。そして、茶室の中にいるのは1950年代のアメリカでポピュラーだった家電製品(トースターやラジオなど)をもとに作られたロボットたち。
その形態からはどこか懐かしさや愛らしさを感じます。
アーティストの話では、ペットのように愛着をもてるロボットの在り方を考えているようです。未来において、私たちが家電製品をどう考えるか、どう関係していくかを問いかけるようなプロジェクトです。

本日、ミシガン大学「未来の家政学」デモンストレーションが行なわれます。

スマイルスキャン・ロボットに変身したキッチン用品達が、実際にどのような動作を見せるのかデモンストレーションを行います。

日時:7月9日(金)14:00-14:30
費用:無料

どうぞお越し下さい!!

2010年7月8日木曜日

クリティカル・アート・アンサンブル、パフォーマンス

7月8日、美術館前にて出品作家スティーブ・カーツ氏(クリティカル・アート・アンサンブル)によるパフォーマンス「Concern Citizens of Kyoto」が行なわれました。
このパフォーマンスは、美術館前にてビールと煙草を無料で配布するというもの。
また、ビールと煙草を渡す際、同時に開会式の招待券のコピーも渡されました。


パフォーマンスの前日、3Fワークルームにてレセプション招待券のコピーやチラシを作成。


パフォマンス当日の朝、ビールと煙草の買い出しへ。


昼食時には、[無料ビール FREE BEER , 無料タバコ FREE CIGARETTES]と、配布時間、配布場所を記載したチラシを作成し、アーティストによるパフォーマンスではなく、ビールと煙草が無料ということだけを伝え、三条大橋、河原町、木屋町、市役所前などの人通りの多い街中で配布しました。


市役所前広場でくつろいでいる人、町中に遊びに来ている人、橋の下に住むホームレスの人などにもチラシを渡しました。


夕方、開会式に招待された人が次第に集まる中で、無料配布のチラシを受け取った人や、興味を持った通りすがりの人々が冷えたビールと煙草を求めて集まりはじめました。


内覧会が始まる前には、美術館前で大勢の人がビールや煙草や談笑を楽しんでいました。



このパフォーマンスの目的は美術館と観衆の制度を人々(アーティスト/美術館/観衆)に問い直すことです。
パフォーマンスを行なったCAEのスティーブ・カーツ氏は京都国立近代美術館の建築を最初に見た印象が、病院や監獄のイメージだったと言いました。
そして展覧会で紹介されているものの是非を人々に問う前に、まず招待された人々や関心を持った人々ではなく、もっと一般の人々が来ることが必要だと感じ、その仕掛けとして無料でビールと煙草を配布するこのパフォーマンスを行ないました。

また、集まった人々には「なぜ無料で配られているのか?」を考えることで金銭を媒介にした交換(資本主義)を、普段美術館に来ない人々(美術館に来る人はある程度の知識を持ち、文化的なことに関心を抱いているとして)が来ることで、暗黙のうちに美術館から排除されている人々(美術館にふさわしくないとされている人)がいるのではないかということを、問いかけました。

そしてもうひとつ重要な意図は、集まった人々がその「なぜ?」について話し合いはじめることです。つまり、公共とはいえど暗黙の支配がなされている空間に、オープンな相互関係を築く場を展開することです。

実際、パフォーマンスを行なっている間に集まった人々/美術館スタッフ/アーティストの間でいくつもの対話がなされました。
特にビールや煙草と一緒に配布したコピーのレセプション招待券について、「これで入場することは可能か?」「可能でないならばそれはなぜか?」ということに様々な意見がありました。
このことは、入場料を支払わなければ作品を鑑賞できない=低所得者は美術館が紹介するような芸術には接することができないという美術館の在り方そのものを考えることかもしれません。

水のゆくえ、プロジェクトの進行

プロジェクトチーム、中ハシ克シゲ+井上明彦が担当する水のゆくえプロジェクト。
このプロジェクトに関しては展覧会開催以前より、琵琶湖疎水に関係するプロジェクトとしてこのブログでもお伝えしてきました。
詳しくはこちら。

このプロジェクトは会期中にも制作が行なわれるワーク・イン・プログレスの作品でもあります。

美術館前で製作中の井上明彦氏担当のアクアカフェ @KCUA Café。

制作には、さまざまな人々が関わっています。本日は京都市立芸術大学陶磁器専攻の長谷川先生が助っ人に参加。


また、開会式でもある本日は、シクロクリーンを用いて琵琶湖疎水を浄化、来客に振る舞うというパフォーマンスも行われました。
シクロクリーン=自転車搭載型緊急用浄水装置は自転車を漕ぐことで水を濾過する装置。
災害時の緊急の飲料水確保の手段として期待されています。
※詳しくはこちら→災害用浄水器・シクロクリーン

自転車を漕ぐだけで飲料水に…
生命の維持に欠かせない水だからこそ、シンプルな方法が必要なのでしょう、

この日、実際に試飲を行った方の中には、濾過前のバケツに入った琵琶湖の水をみて「これ、本当に飲めるの?」と懐疑的な方もいらっしゃいましたが、自分たちがいつも飲んでいる水はいったいどこからどうやってめぐってくるのかを考えるきっかけになったのではないでしょうか?